和尚のミニ法話

2014/01/07

ものもー、どーれ。

正月三が日は年始受けや年始回りでけっこう慌ただしく過ごしました。毎年のことですが、ゆっくりと箱根駅伝を見ることもかないません。一日は地元矢田の方たちを中心に年始客が大勢来ます。酒が入ってにぎやかになります。二日は吉野屋の方たちが年始に来ます。その後、寺の方からお供を連れて年始回りに出かけます。
さて、寺年始の仕方は、年始物を持った供が玄関を開けて「ものもー。矢田光照寺年始!」と励声に言います。するとそのお宅の家人は「どーれ」と返事をして出てきます。顔を合わせた後に「おめでとうございます。今年もよろしく・・・」等々の挨拶を交わします。
「ものもー」と言うのは、「もの申す」ということです。TVの時代劇に出てくる道場破りの「たのもー」みたいなものでしょうね。「どーれ」は「どれ、言ってごらんなさい」ということです。
「もの申す」と言うのですから「どれ聞きましょう」となって、玄関内で改めて「新年おめでとうございます。」となるのです。
ところが、寺方は今でも「ものもー」と言って入っていくのですが、「どーれ」と返してくれるお宅はほぼ皆無です。数年前までは数軒あったのですが、今年は全く聞かなかったとのお供の弁です。知らない方がほとんどなのでしょうね。

さらに、お供との挨拶が終わると、外に出てきて方丈と挨拶を交し合います。向こう三軒両隣がそれぞれ玄関先に出てきますので、互いに新年の挨拶を交わしてから、家に戻ります。
これも知らない方が多く、年始物を受け取るとさっと奥に引き込まれてしまう方が多くなってきました。外にいる私は、挨拶ができずに次のお宅に行くことになってしまいます。

伝え残していきたい風習ですが、時代の流れで消えていく運命なのでしょうか。

(写真は、光照寺の年始物。今年のマッチはこの色です。)