和尚のミニ法話

2014/02/18

電車席、譲り譲られ、ありがとう。

関東甲信地方の大雪が大変です。電車や車内への缶詰状態のニュースや孤立集落の様子、建物や農作物被害の大きさが伝わってくると、災害の恐ろしさを改めて感じます。雪には慣れているはずの私たち新潟県人でも、このたびのような降り方であったら、やはり何らかの被害を受けていることでしょう。一刻も早い救助救援がなされますように願っています。
実は私と家内も大雪の影響を受けたのでして・・・。ちょうど関東へ車で出かけていまして、降り始めた14日の遅くに帰山する予定でしたが、高速道の通行止めと一般道の大渋滞に巻き込まれて、結局三日間も予定外の足止めを食ってしまいました。幸い、ホテルに宿泊することができました。寺の用事の変更をお願いして、高速道の規制解除を待って過ごしました。良寛和尚の「・・・死ぬるときは死ぬがよかろう」の状況に似ていましたが、いつ帰れるかばかり気になって、そこまで腹はくくれませんでした。
さて、待っている間、電車は動いていたので都内に出かけました。
山手線でのことです。私が座席に座っていたら、次の駅で小さな子供さんを抱いた妊婦さんが乗ってこられました。私は扉の近くに座っていましたので、すぐ立って妊婦ママさんに席を譲りました。ありがとうございますと頭を下げてにこやかに座ってくださいました。すると、私よりも数人も離れた席に座っていた青年がすっと立ち上がって私に「どうぞ座ってください」と席を空けたのです。私は二度ばかり遠慮しましたが、彼の好意を受けることにしました。「どうもありがとう」「いえ、どうせ僕たちすぐ降りますから」。上野で青年は降りる様子でした。駅に着き扉に向かう彼らに、私は思い切って「おにいさん、ありがとう。」と大きな声をかけました。彼らはにっこりとほほ笑んでくれました。その時です。彼が友人にこう言ったのです。「おれ、今日、何かいいことあるかな。」と。私はとっても嬉しくなりました。
後で家内から、「彼は自分も妊婦さんに譲りたかったみたい。あなたが立ったのを見て、『おれがあの人に譲ろう』と言って席を立ったのよ。」と聞かされました。彼の気持ちも伝わってきて、いっそう幸せな気分になりました。

(写真は、「方丈の地蔵様コレクション」の新たな仲間です。)